作品の制作スタイルは人それぞれだと思いますが、僕はとにかく枚数をたくさん描く事にこだわっています。
展覧会前に、出品作品をずっと描いて、徹夜した、とかいう話をよく聞きます。
…この「一枚に対して頑張る制作スタイル」は、個人的にはあまり支持しません。
というのも、実際に作品というのは描き始めた時点で、完成時点での価値の最高点が既に決まっていると思うのです。それを何度も何度も描き直したところで、それ以上にいいものになるとは思えません。
むしろ描けば描くほど悪くなることもあります。
一枚にそこまで努力できるなら、その努力の方法を少し変えてみては、と思うのです。
僕は一枚一枚に努力するのではなく、枚数をたくさん描く事に対して努力しています。
そうやって描き始めから完成までのプロセスを多く経験することで、次の挑戦が生まれてきます。繰り返しを速くすることで変化したいという思いも速くなるし、新しいことを試すのも速くなる。
様々なスタイルの絵画を速いスピードでこなす事は、結果的に実力も上がり、最終的にはいい作品を描けるようになると思うのです。
経験拡大も、積み上げも…
どちらもやっていくには、改善点を意識して枚数をこなす事しかない。
だから今の一枚に対してはそこまで頑張りません。
常に描くことを頑張っているわけですから、目の前の一枚に対しては常に自然体で向かいます。
例えたった1時間で描いた作品でも、今までの積み上げた時間+1時間なのです。
時間をかけた作品が、いい作品とは限らない。